生産者育種

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 生産者にとって市場からの今の売れ筋商品とか種苗会社の新品種の紹介はなにより欲しい情報の一つである。なぜならそういった情報を真っ先に手に入れて、売れるものを作り、売ってしまわなければ、翌年は売れる保証はないからである。

 今の切花の流れは種苗会社が開発したものを、農家(生産者)が生産し市場に出荷、花屋さんが売るというのが一般的である。工業製品であれば、開発→製造→営業と一社内で完結すべきことが、花業界では4業態を経ないと全うしない。ここでの生産者の役割は製造工場である。中には直売まで行う生産者もいるが、それとて売上全体から見ればごくわずかである。
 生産者は売り物(商品)のタネ(種苗)を種苗会社から仕入れ、それを育てて売っている。商品の流通量をコントロールしているのは種苗会社である。であるから、種苗会社が制限なく販売すれば、そのものの価値は暴落してしまう。前の年に売れたものが次の年には普通の価値になってしまうのはこれが原因である。

 ものが売れるということはそのものに希少価値があるからであり、どこにでもあふれていれば売れないということである。今はこれが高いとかこれが少ないとかいった情報が入る。つまりそのものに希少価値があるということである。すぐにその情報に飛びつく前に、何故それに希少価値があるのかを考える必要がある。新しいものであるためか、栽培が難しいためか、アレルギーなどのクセがあるためか。希少価値の要因が単に新しいものであるためなら、それが認知されれば希少性は失われる。だから、生産者には最初に書いたような行動が見られるのである。栽培が難しかったりアレルギーなどのクセがあるなら、それを克服できる手段、環境や栽培技術があるのか。要因と自分の経営スタイルを照らし合わせ、それを作るか否かを判断していくべきである。

 種苗会社にいわれるがまま新しいものを焦って作らなくても、自分で導入したり開発することも可能である。一つは海外からの導入。もう一つは生産者育種である。
 切花の出荷時期は暖地と寒冷地・高冷地である程度すみ分けされている。暖地は12月~5月、寒冷地・高冷地は6月~11月という具合にである。しかしながら、作られているものは暖地で作られているものを夏秋に出荷するのが主体で、寒冷地・高冷地ならではのものはまだまだ少ない。それは日本の種苗会社の拠点はあくまで暖地であるという点が原因である。
 したがって、北海道の生産者は寒冷地・高冷地に適した品目・品種を導入することが必要になってくる。幸い、ガーデニング大国である英国は気候条件は北海道と似通っており、世界中の素材が集められている。もちろん素材だけでなく、知見も豊富である。ここから学ばない手はない。

 生産者育種は文字通り生産者が自分の商品を作り出すことである。F1品種やパテント(登録)品種は育種の素材として利用することは難しいが、それ以外にも原種に近いものやパテントのないものは無尽蔵に存在する。それらをちょこっと交配して、独自の新しいものを作ってしまおうということである。
 もちろん、書くのは簡単だが、実践するには多くの労力が必要である。なにしろ、交配させるのは花の咲いている時期であるから、当然出荷しながらの作業になる。当座の利益と将来の利益、労力の配分が難しい。それに、必ずしも売れるようなものが出てくるかは保証がない。しかし、一つだけ確かなことは播かなければ生えないということである。
 ピンセットと筆を持って交配に取りかかろう!まずは身近にあるラナンキュラスから攻めるとするか・・・。

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生産者育種の欠点というか注意点としては、育種労力は当然ですが、新品種の宣伝コストもあると思います。
メーカーの品種であればメーカーが「ある程度」はやってくれますので。。。

また、ものによっては「量」がないと市場で認知されないと言うのもありますね。
↓はコメなので量が桁違いですが。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyagi/kikaku/058/4.htm

 Sekizukaさん、コメントありがとうございます。
 花の育種の場合は、見た目で既存品種との違いが判別できますから、食べ物と比べれば明らかに有利な条件であると思います。
 ネット取引が増えてきたとはいえ、セリ取引でものを見ることができますから、それほど宣伝にコストがかかるとも思えません。
 もちろん花持ちなどのポイントで育種が行われた場合は、おっしゃるように宣伝も必要かと思います。
 量に関してはどこをターゲットにして売るのかにもよりますが、オリジナルである限りはそれほど問題とは思いません。それよりもバラエティ(多様性)の方が重要かと思います。

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このページは、宮下勇作が2006年5月23日 00:52に書いたブログ記事です。

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