花づくりセミナー2008

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 今日は滝川にある道立 花・野菜技術センターで花づくりセミナー2008が行われました。
 ゲスト講演と花・野菜技術センターの研究報告を目的に、毎年この時期に開かれています。

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 ゲスト講演は、東海大学開発工学部生物工学科の林真紀夫教授による「施設園芸における省エネルギー技術について」でした。
 持ち時間の一時間では説明しきれないほどのボリュームで、細部は触れられず駆け足になってしまったのは残念でしたが、非常に示唆に富んだ講演でした。
 省エネ技術として、1)暖房負荷抑制(熱消費側省エネ技術)、いわゆる保温性(被覆)資材の特性と、2)省エネ暖房方式(熱供給側省エネ技術)に分けて説明が行われました。

 まず、1)保温性(被覆)資材の特性についてです。
 初めに、温室の熱収支を見てみると、熱が逃げるのは隙間から逃げる場合と、被覆資材そのものから逃げる場合の二通りあります。
 そのうち隙間からの逃げは全体の5~20%あるといい、これは、穴を塞ぐなどの対策による気密性を向上させることで、ゼロにすることが可能です。
 問題は被覆資材そのものからの逃げです。これは逃げる熱量全体の60%~100%を占めており、対策の柱とすべき点になります。対策は高保温性資材を使うか、多層化して断熱効果を高めることになります。

 被覆資材の多層化することによる省エネ効果は以下の通りです。
 1重(外張り)のみ 省エネ0%
 1重1層カーテン 省エネ30~45%
 1重2層カーテン 省エネ40~55%
 1重3層カーテン 省エネ50~70%
(1重は外張り、1層は内張り)
 このように、多層化することで省エネ効果は上がりますが、それは比例的ではなく、多層化が進むにつれてその効果の度合は低くなってきます。現状行っている被覆に+1層が現実的な選択になりそうです。

 また、被覆資材の厚さによる保温効果はほとんど違いがありません。もちろん厚いほど赤外線の吸収率は大きいのですが、それよりも多層化による保温効果の方が大きいため、厚手のフィルム1重1層よりも、薄手のフィルム1重2層の方がより高い保温効果が得られるといいます。
 そして、現在流行りつつある空気膜二重温室についても、保温効果は固定二重被覆と同じであるといいます。ただし、1重1層の被覆に比べると、隙間が生じない分、気密性を高く保てる利点はあるといいます。
 要は、温室の一番外側の層をいかに低温にできるかが、保温性を高めるポイントだそうです。


 次に、2)省エネ暖房方式(熱供給側省エネ技術)についての説明がありました。
 まず、一番基本的な省エネ方法は、暖房機の点検・清掃だそうです。煙突掃除やノズル掃除・交換、空気量の調節などで暖房効率を上げることができます。さらに煙突からの排熱回収器を取り付けることで、より効率は高まります。

 省エネ暖房機を選択する上で考慮すべき点がいくつかあります。
1)プラスの費用対効果が期待できる。
2)燃料・熱源が安定的に供給される。
3)運転制御性がよく、自動運転が可能で、省力的である。
4)故障が少なく、保守が容易である。
5)環境負荷が少ない。
6)設置工事が容易であり、工事による栽培への影響が少ない。
7)装置設置などによる栽培面積低下や作業性低下が少ない。 
8)収量・品質低下への影響がない。
 すべてを満たすものはあり得ないので、これらを総合的に評価して検討すべきです。

 まず取り上げられた省エネ暖房装置は、まずヒートポンプです。
 ヒートポンプは、冷媒の圧力を電気を使って変化させることで、空気中や地中、あるいは水中にある熱をやり取りする仕組みで、使用する電気料の3~5倍の熱量を得ることができます。
 これは発電や送電による損失まで考慮しても、エネルギー効率は1.0を超える技術です。

 しかし、このシステムの難点はやはり設備費用で、空気熱を利用したヒートポンプで温風暖房機の3~5倍、地熱を利用したものはさらにその3~4倍掛かるようです。
 より安価な空気熱を使う場合、外気温が低いと得られる熱量(COP)が低下します。そして霜取り時間が増えることから、暖房が停止する時間も増えるため、寒冷地では不利なようです。
 ただし、北海道のような寒冷地では運転時間が長くなる分、利用価値がある可能性も捨てきれないので、検討する価値はあるようです。
 現実的にはヒートポンプ単独の使用よりも、一定温度までは温風暖房機を使い、それ以降はヒートポンプを利用するというハイブリッド方式の利用を勧めていました。


 次に、代替燃料として、一つに木質ペレットの説明がありました。木質ペレットについては、既に月形で導入済みなので、詳しくは触れませんが、燃料の安定供給と価格、機械の導入費用に課題があります。
 カーボンニュートラルの発想から考えれば、地元の材料を地元で加工して、できるだけ輸送や製造に掛かる負荷を押さえることが必要で、それがひいては低価格化につながっていくものと思います。

 これら以外にも「コジェネ」「トリジェネ」「古タイヤボイラー」「地下水・地熱水・太陽熱などの自然エネルギー利用」が紹介されていました。


 以上のように、現状で新しい技術を導入するには、かなりの設備投資が必要になり難しいと思います。ですから、まずは保温性の向上や暖房機保守・清掃などによる暖房効率の向上を基本に据えて、対処すべきであるとのことでした。
 しかし、将来的には期待できる新技術があり、今後の技術の進歩や普及によって設置費用も安くなり、性能は向上してくると思います。
 今後もニュースに気をつけて注目していきたい事項の一つです。


 講演の最後に、野菜茶業研究所作成の「温室暖房燃料消費量試算ツール」が紹介されていました。
 ハウスの大きさ、被覆資材の違いから暖房費を計算できるソフトになっています。
 エクセル形式のファイルをダウンロードして利用可能です。


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 引き続き、花・野菜技術センターの研究員より研究報告が行われました。
 本年度の成果及び次年度以降の研究課題の紹介、トルコキキョウとデルフィニウムの実証ほ試験の発表、花き病害虫の発生状況について各担当研究員から発表されました。
 また、成果については、ロビーにてポスターでの展示がされていました。

 もっとも注目した研究は、バラやデルフィニウムの前処理や輸送で糖を使うことで、鮮度や発色の向上がみられると行った報告がありました。

 最後になりましたが、全般を通じて、内容が濃い割には時間が足りない感じがしました。
 今後は、もう少し時間的な配慮をしていただければ、もっと充実したセミナーになると思います。

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 oha 今日も1ヶ月先の気温です。糖による水揚げに関する事柄が大田市場のページにも紹介されていました。題材はミモザアカシヤでした、このミモザアカシヤ花時は特に水揚げしにくく 水落しやすい それらに対する対処方法をデータでまとめてありました。良い参考になりました

北空知地方に、白鳥がやってきました。水田は、まだ雪が残っているのにマガンや白鳥に春の訪れを知らされます。今年はやっぱり早いのか?これからずっとなのか・・・。月形も白鳥はやってきているのでしょうか?

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このページは、宮下勇作が2008年3月17日 23:52に書いたブログ記事です。

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