花き産業の危機を乗り越えるために必要なことは?

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 昨日行われた平成20年度北海道花き生産流通セミナー(北海道花き生産出荷推進会議主催)では、クリザールジャパン(株)の海下展也社長による、「危機に立つ花き産業を乗り越えるために」と題する基調講演が行われた。

 今、生産者として求められる行動は、
1. 基本に帰る
何を止めて、何を行うか。→習慣の見直し
2. 消費者の考えを知る。
消費者が求めるものを提供できるか。→どこまで理想に近づけるか。

花きを購買する理由の主なものは、
日本では、ギフト29%、家庭用28%、仕事花23%。
(20年前は、仕事花60%、家庭用10%)
英国では、自分のため63%。
自分の花の用途を知るだけで、戦略は変わってくる。

世界から見た日本の花き産業は、
 日本の花き生産面積は、全世界の5%しか占めていないが、生産金額は13%を占める。
 中国やインドでは逆に、面積比は大きいが、生産額比率は小さい。今後、高単価の花きを作るようになれば脅威に。

 日本の花きは栽培技術はトップクラスだが、採花後の水揚げ処理を含めた、流通対応はほとんどできていない。
→きれいな水で正しい水揚げ、予冷処理、保冷輸送といったサプライチェーンの確立。

輸入品の増加
 ここ4~5年で200億円から280億円へ。
 この10年の傾向は、オランダ産が減少している一方、コロンビア産のカーネーション、マレーシア産のSPマムは増加、タイ産のデンファレは横這い状況。

花の浸透度と文化度
花の消費者層は
 マニア 2.5%
 流行先取り 13.5%
 一般(早め)34%
 一般(遅め)34%
 無頓着16%
といった構成で形作られている。
 最初に飛びつくのはマニアと呼ばれるごく少数の人達。それが浸透していくにしたがって、流行を先取りする人へと広がる。この状態までは仕事花が主用途であり、家庭や個人消費は期待できない。
 やがて一般でも流行を早めにキャッチする人が現れ、仕事花から家庭花へ消費が拡大していく。そして一般の流行に後れた人が取り入れるようになると、個人で楽しむ花にまで用途が広がる。

 これを花の購入度と用途の関係で示すと、
Step1(購入度~10%)仕事花、高級ギフト。(中国、ベトナム)
Step2(購入度~25%)仕事花の伸張、家庭花の始まり。(韓国、香港)
Step3(購入度~40%)仕事花の伸び悩み、家庭花の伸張。(日本、ドイツ)
Step4(購入度~60%)家庭花の普及、カジュアル・ギフトの伸び。(英国、米国)

 つまり、現在の仕事花の伸び悩みはある意味必然であり、家庭花をいかに伸ばしていくかが今後の課題であると言える。
 また、上記のStepごとに花の用途の割合を見てみると、Step1からStep4へ移行するにつれ、仕事花の割合は落ち込むが、反面、家庭花が伸びることでギフトも伸びる傾向にあるという。
 購入金額もStepが進むにつれて増加していく。言い換えれば、家庭用需要を伸ばせればパイ全体が大きくなることを意味する。

花き産業を躍進させるためのヒント(欧米に学ぶ)
1) リピート購入を促すため、切花の日持ち保証や顧客満足度保証販売の導入。
2) 消費者選択を可能にするため、環境と人に優しい栽培・流通認証制度の導入。
3) 企業に対し花きの購入も社会貢献の一つであるという認識の植え付け。
4) 魅力的で買いやすいディスプレイの提案。
5) 価格競争を避けるために、他人(店)との差別化を図る。
6) 家庭花の普及のために、生活必需花の提案。
7) いつでも、どこでも購入できるよう、オンライン販売の普及。
8) 幼い頃から花きに親しんでいない人は、将来の花きの購入者にはならないことから、花育を推進して未来の需要を育てる。
9) 花き産業全体でPR(販売促進活動)を実行。

 1)の日持ち保証や顧客満足度保証とは、消費者が求めているものをいかに実現させていくかの典型とも言える。
 英国のスーパーで導入した結果、来店客当たり購入率が1%から8%へ上昇した。
 生産者としては、適切な水揚げ処理、鮮度を維持するために迅速でかつ適切な温度管理、保水を施した流通面で貢献できる。

 2)および3)に関しては、
・フェアトレード
・カーボン・マイル(カーボン・フット・プリント)導入による、地産地消の促進。
・梱包資材の軽減化
・MPSやエコファーマー等の認証制度の導入
・環境保全型農業の励行
・企業の社会的責任の認識と表明。→持続可能な供給先からの購入。3R推進、パートナーシップ
といった項目が挙げられる。
 MPSの意義は、いずれは消費者へも浸透していく可能性もあるが、一義的には、記録を付けることで、自分たち(生産者)の立ち位置や問題点を考え、話し合うためのツールとしての活用が望ましい。

 4)~7)の項目については、直接生産とは結びつかないが、実際に自分の花が売られている場所へ赴き、自分の商品が消費者意識にあっているのか確認する手段となりうる。
 同じものばかりでは魅力がないことの気づき。
 ネットやブログでの情報発信。

 8)の花育は、子どもを通じて親にアプローチする。
 9)の販促は、オランダや米国では基金の積み立てに基づいて活動が行われている。
 サイトの活用、CMの利用、花きの効用。

日本の花き流通を変革するためには。
1) 問題点
 出荷規格の不統一。
 前処理、低温管理、湿式輸送のチェーンの不在。
 短期集中出荷。
 事前情報の欠如。
2) 花きの流行を作る力
 生産の力:完璧な生産
 流通の力:時間、鮮度保持
 言葉の力:品質保証
3) 花き産業全体に不足するマーケティング
 誰が買うのか?
 どこで買うのか?
 何を求めているのか?
 名詞ではなく、動詞を売る。
 →「バラ」を売るのではなく、「感動を呼ぶ」ものを売る。
 →「カーネーション」を売るのではなく、「気持ちを伝えられる」ものを売る。
 →「菊」を売るのではなく、「心が癒やされる」ものを売る。

個人的まとめ
・人まねでなく、自分(産地)の問題点、立ち位置をしっかり把握する。
・止めるべきこと、すべきことを整理してから行動する。
・独りよがりではなく、消費者が求めるものをどう形(結果)にしていくか。

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マニア層から流行を先取りする人達を相手に出荷。高単価で推移後、その情報を知った産地がバカみたいに作りあっという間に単価は下がり数年後には無くなってしまう。(市場間)・(産地間)の横のつながりが薄かった昔は、いろんな花でこの繰り返しをしてきたと思います。でもこの場合の単価が下がっている時は、いわゆる(使いやすい価格帯)となり今まで手が出せなかった色々な花屋が使い始めている大事な時で、安くなったから止めるでは無責任というか自己満足というか。。。典型的な(どんな客が買って)(どう使われていて)(どれくらい必要なのか)考えずに作っていたパターンです。これから安値相場が続く場合、どこにピークを持って行くかで同じ物でも売り上げの差がかなり出てくる様に思われます。
昔の生活環境が影響してるかもしれませんが、僕個人的には生活必需花というのは仏花(葬儀・墓花だけで無く)なイメージです。仏壇に花。これもいわゆる花育だったのでしょう。もちろん地域によっては、仏壇なんて無い所が多いかもしれませんがそれぞれの地域性は大事にしたいです。賛否両論はあると思いますが。。。いずれにせよ、業界全体でもう一度見直すべき所がこの数年で色々出てくるのでしょう。

 不況下に陥って、ようやく考え始めたと言うところでしょうか。
 トヨタが一つの会社でやっていたことを、花業界は品種開発、生産、流通、販売と細分化して行っています。
 今までは自分たちの周りしか見ていませんでしたが、いざ全体を見渡してみると、なんとこの業界が非効率的なことなのかがよくわかります。

 代わり映えのない新品種、無計画な生産、情報が滞る流通、営業できない販売。
 実際は皆歯車のはずなのに、それぞれがプライドを持ちすぎていて、意見を聞かない、言わない。
 考えてみれば、こんな状態で需要が伸びるわけがない。
 非常に楽観的に考えれば、今まで何もしてこなかったのに、ここまで来られた。なら、何かをすればもう少しましになるのではないか・・・
 
 まだまだ、未来はあります。

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このページは、宮下勇作が2009年2月18日 21:39に書いたブログ記事です。

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