今日、北海道立文学館で行われている「吉村昭と北海道」展へ行ってきた。北海道ゆかりの作品の原稿や関連資料が数多く展示されており、吉村昭の人となりが少なからず理解できとても楽しむことができた。
吉村昭と北海道の関係は非常に深く、北海道を舞台にした作品を数多く書き上げている。当地月形とも縁があり、明治35年(1881年)設置の北海道最初の監獄である樺戸集治鑑(樺戸監獄)を題材にした「赤い人」の取材で月形を訪れている。古の遺産と言えども、自分の町が文学に遺されているのは感慨深いものがある。この記録によって当時の生活環境やこの時代背景をたどることができる。
私が吉村昭を読んだのは「高熱隧道」が最初である。黒部川第三発電所のトンネル掘削に関わる、自然に挑む人間の様を忠実に表した記録文学の金字塔である。その後読んだ「三陸海岸大津波(海の壁)」では、明治から昭和にかけて三陸海岸で繰り返し見舞われた津波の状況を克明に記録している。
どちらも実際に現場に居合わせた人たちから証言をもらい、また当時の記録を丹念に調べ上げてまとめていく。人伝で語り継がれてきた歴史はそれを知る人・語る人がいなくなった時絶えてしまう。しかしそれが文字で記録されることで永遠に受け継がれる。
吉村昭自身もある時から証言者の減少から記録文学を諦めざるを得なくなったといい、そこから歴史文学へと方向転換していく。
現代は文字だけでなく映像や画像でも記録することが可能である。しかし記録は自然になされるものではなく、人が意識的に行わなければ遺らない。
「歴史は繰り返す。同じ過ちを繰り返さないために、われわれは歴史から学ばねばならない。」と言われる。後世が学ぶべき歴史を伝えるのは現世のわれわれの役目なのだと、あらためて考えさせられた。
「吉村昭と北海道」御覧頂き、ありがとうございます。研究会もわずかな部分ですが、協力していました。今後も宜しく御願いします。
吉村昭研究会・桑原文明
799-1322 愛媛県西条市国安314-2
℡・FAX 0898-66-1556
メール bunmei24jp@ybb.ne.jp
吉村昭資料室 http://www.geocities.jp/bunmei24jp/
桑原さん、コメントありがとうございます。
「赤い人」で月形とも縁のあった吉村昭氏の足跡を、少しばかり垣間見ることができ楽しい時間を過ごすことができました。
そして、この後3月11日に起こったあの震災。
「三陸海岸大津波」で記録されていた津波の惨事を目の当たりにし、自然の猛威と人の無力さを思い知らされました。
吉村氏亡き後、この記憶をどう後世に伝えていくのか。それが現代人に課された使命に思えてなりません。