農業問題、エネルギー問題、環境問題を一気に解決させる秘策となるか!?

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 地球温暖化を初めとして原油の高騰、エネルギー危機管理などの影響を受けて、バイオマスエネルギーが脚光を浴び始めている。
 バイオマスエネルギーとは植物(農産物)からバイオエタノールやバイオガス(メタン)を取り出して利用するエネルギーである。
 石油と違い再生産可能なエネルギーであり、さらに植物は現代の二酸化炭素を炭酸同化しているので、実質、二酸化炭素の収支がゼロ(カーボーンニュートラル)という点で温暖化対策にも有効なエネルギーであると言える。

 しかし、食糧との農地の奪い合い、ひいては農産物の価格上昇の懸念から、問題が多いことが指摘されている。

20080303.jpg 昨日、北海道大学大学院農学研究院の松田從三教授による、「北海道農業とバイオマスエネルギー」と題した講演を聞く機会を得た。農業振興の視点からバイオマスエネルギーを見直すことを主にした発想で、非常に可能性を秘めた技術であると考えられる。

 日本においてバイオマスエネルギーが利用されない理由は、政策の問題が大きく関係している。
 まず、バイオマスエネルギーを活用する場所がないことが一番の問題である。  
 例えば、バイオガスから発電しても買い取り額がコストに見合わない。さらに、RPS法(新エネルギー等電気利用法)による2010年度目標値が1.35%と非常に低い。そのためこの数値は既に過剰に達成されているため、電力会社が積極的にバイオマスエネルギーを買うことをしない。
 さらに、バイオエタノールを製造しても、現状ではガソリンに対し3%の混合しかできず(E3)、しかも直接バイオエタノールを混合するのではなく、ETBEという物質に替えたものしか混合できない。混合率を上げたり100%バイオエタノール(E100)にするには、エンジンの調整や新たな自動車の開発が必要になってくる。
 その反面、EU諸国、特にドイツでは新エネルギー利用の目標値が25%以上と非常に高く、発電した電気も高値で買い取りされる仕組みが出来上がっている。また、スウェーデンではバイオエタノールの直接混合が認められており、5%混合(E5)がレギュラーガソリンとして売られている。

 バイオマスエネルギー利用の手法として、現段階で一歩進んでいるのはトウモロコシやサトウキビなどのデンプンや糖質原料を使ったバイオマスである。しかし、このバイオマスは食糧との競合が起きるという欠点がある。
 次に考えられているのは草本系バイオマス、つまり、実を収穫して残ったワラなどの植物残渣を処理してエネルギーにしてしまう方法である。この手法が上手く回ることで、食糧利用とエネルギー利用の棲み分けが可能になってくる。農家にっても食糧とエネルギーの両面からの収入が得られ、また、今まで水田に放置されていたワラの回収も進むといった副次的な効果も期待できる。
 さらに、技術が進むと木質バイオマスの利用が進んでくる。草本系バイオマスに比べるとエネルギー再生に時間がかかるので、純然たる再生可能エネルギーと言えるかは疑問があるが、それでも間伐材の利用や廃材などのエネルギー活用を進めることは意義あることである。なんと言っても木質バイオマスの保存量は草本系バイオマスの比較にならないほど大きいものである。
 しかしながら、草本系バイオマスや木質バイオマスの利用は、現段階では技術的、コスト的な課題があり、即戦力としては期待できるものではない。

 エネルギー資源作物栽培を目的として農地を利用することは、食糧争奪の面から好ましくないことは既に書いた。
 日本の食糧自給率は40%。現在は環境やエネルギー問題がクローズアップされているものの、いずれ食糧問題が主要テーマになる日が必ずやってくる。その時にまず必要なのは、農地、そして耕作する農家だ。
 その農家は年々減少の一途をたどり、耕作放棄地は増加している。これではいざというときに必要な食糧生産はままならない。
 そこで、こういった耕作放棄地にエネルギー資源作物を作付けして、農業振興と農地保全を図ろうというのが、今回の発想である。普段は多収米などのエネルギー資源作物を作付けしておき、必要とあらば、食用作物にいつでも転換できる状態を確保しておく。こうすることで、農地の保全と、農家の所得確保が図れるという具合だ。まさに一石二鳥の対策である。

 作る作物は水稲が適しているという。その理由はいくつかあるが、まず最重要作物であり、万が一の時には食糧にも変わりうる利点もある。さらに水田の多面的機能を利用できる面がある。また、稲わらは飼料や敷料にもなりうるし、
なんと言っても日本全国で栽培可能であるし、栽培技術があることも大きな理由だ。海外でもバイオマスエネルギーとして利用する農作物は、その国の最重要作物である。
 こうして、当面は糖質・デンプン質バイオマスをエネルギーとして利用していき、技術的・コスト的な解決が図れた段階で草本系バイオマスや木質バイオマスに切り替えていく。ここには産廃業者の参加や家庭から出る生ゴミを参加させることもできるから、すべてのバイオマスを利用できる技術になりうるのである。
 さらにそれ以外にバイオマスエネルギーを製造する理由は、製造技術の取得・確立につながるし、エネルギーをある程度製造することは外交戦略上の切り札にもなりうるという。

 バイオマスエネルギーは、現在の日本の農業問題を解決する糸口にもなりうる重要なテーマである。
 北海道は都道府県別の食糧自給率は200、以下、秋田141、山形122、・・・・・神奈川3、大阪2、東京1となっている。
 バイオマスエネルギーは日本の農業を見直す良いきっかけになるかもしれない。
 農地の整備、農業所得の向上、エネルギー資源の活用、環境(地球温暖化)対策、現代の農家が抱えるすべての問題を解決できうる可能性を秘めている。これが上手く進むか否かは農業政策とバイオマスエネルギーの利用をどう政策的に整備していくかにかかっている。
 しかし、それ以前に、国民の理解が得られなければならないのはもちろんである。

 ゆみこの日記 講演会「北海道農業とバイオマスエネルギー」
 北海道バイオガス研究会

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コメント(6)

(おから)もカワイソウナもんで、産業廃棄物。。
あれこそエネルギー転換出来ますよね。

セルロース系のバイオマスが利用可能になれば、有機物全般がエネルギーとして利用可能になります。
生ゴミとか産業廃棄物と呼ばれていたものが、突如資源として注目されるようになるわけです。
ひょっとしたら奪い合いになるかも・・・・?

oha 昨日までの3ヶ日間暖かい南西の風、今日は一変して寒い寒い北東の風。 今日の話題 思い知らされる事 色々書きたいと思います。   難しい問題ですね・・・此方を立てれば あちらが立たず、 あちらを立てれば 此方が立たず、・政治の方を立てれば 石油業界が立たぬと、政治方針もあろうが、まずはハイブリット車の補助金付きの促進が一番効果的だと思います。何しろ 同じ距離進むのに 半分の化石燃料ですむ。国を挙げて 温暖化対策を推進している割りには 腰が引けているみたいです。ヨーロッパあたりは昔から環境問題に対する考え方が 基本的に違っていましたね・陸続きのせいでもあったから?でもないと思いますが。特にドイツは進んでいる ソレコソ昔 どれ位昔かは忘れたが 生ごみを広大な地下タンクに入れてメタンガスを発生させ利用 地下タンクの上は駐車場 公園に利用と 日本の場合何処に行っても生ごみは化石燃料をわざわざ使って燃やしているのが現実です。日本も少エネの先進国を見習ってやって貰いたいものです。もっと色々書きたいが 今日の予報 雨だったけれど晴れてきたので農作業にーーー

 konbanha 昼からは 冷たい雪交じりの雨模様でした。食べられ植物はトコトン食べる方に使い切り その他の植物は 紙 燃料 バイオメタ・・・等にとことん使い切る方法があると思います。バイオメタノールは穀物を発酵して作るそうです。今度新潟ではバイオメタノール用の米を来年度から作るそうです。私なら 今の米余りの現状から 小麦と同等に変えれるように加工してもらえば食料事情はグーンと上るのではなかろうか? 昔人が思う サトウキビ、トウモロコシ、米 みーんな油の材料かと思うと、もったいないなあーーー。

現在のバイオエタノールの状況は、水稲で言えば米の部分を利用して製造します。いわば酒を造って、それを燃料に使うのと同じです。
しかし、それでは食糧との原料の奪い合いが起きることは必須です。すでに欧米ではトウモロコシや小麦の価格が上昇しています。これは一部の投機筋が介入しているために加熱している部分もありますが、当然起こりうる問題です。

今回の発想は、食糧と競合しない耕作放棄地や不適地を利用して、米を作付けし、そこからバイオエタノールを製造しようと言うことです。
その結果、燃料用の米の生産で農家は収入が得られますし、さらに農地の維持にもつながるという考えです。
そして、技術的・コスト的に確立してきたら、米を原料にするのではなくワラを原料にすることができるようになります。
つまり、普段捨てられている部分が燃料資源として利用されるようになるわけで、農家にとってはますます生産意欲の高まる方式であると考えます。
ですから、もったいないという発想はまったく逆で、バイオエタノールを製造することで、よりゴミが減り農家の収入も増える可能性があります。

oha なあーんだか 季節が一ヶ月ずれ込んでいるみたいですね。此の地も山は雪で真っ白。そうですね、セイタカワダチ草の農耕地を作り出すよりも、元気ある農業者が バイオメタ用の米を作った方が、どれだけ 国のため、地球のためになるだろうか。 

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このページは、宮下勇作が2008年3月 3日 23:29に書いたブログ記事です。

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